2025.6.4
古都のいとなみ

周囲を山々に囲まれた古代の都、奈良(Nara)。日本という国そのものが、奈良からはじまり、
ヤマト政権が誕生してから約5世紀以上にわたり、奈良の地はこの国の中心となっていました。
京都ほど都市化の進んでいない奈良では、日本最古の歌集 万葉集のなかで歌われる山や川の景観が、
ほどよく保たれてきたようです。このたび 2026年の世界文化遺産候補となった、飛鳥の地 。
自身の足で歩き巡ってみるとお寺や神社、遺跡、古墳などが多く、想像力をはたらかせなくとも、
あたかも古代の情景に身をおいている感覚になります。巨大な天井石が露出した姿の 石舞台古墳 など、
1300年以上経ってもなお謎に満ちている飛鳥、ゆったりと訪れていただきたい場所です。
地域の人と話したなかでも多々の学びがあり、現代人が忘れてきてしまった日本人の原点ともいえる、
自然とともに生きる人々の営みをしづかに五感で味わうことができるかと思います。
久しぶりに訪れた 唐招提寺(Tōshōdaiji)は、国宝の建造物と、永くつづく美しい苔庭が印象的でした。
苦難の末に来日された唐の高僧、鑑真大和上 が開いたお寺、6月初旬の数日のみ特別開扉があるとのこと。
また奈良公園にある博物館では、最大規模となる国宝展を開催中です。漆黒にかがやく中宮寺のご本尊、
菩薩半跏像 は飛鳥時代の最高傑作のひとつ、古典的な微笑はどこまでも深く優しさを感じるものでした。
いくつもの時代を超え先人たちから伝えられた人の祈り、この国の文化を繋いでいる人々のこころも含め、
私たちのかけがえのない宝だと感じます。ぜひ日本の美をほがらかにお愉しみください。
奈良国立博物館 開館130年記念特別展 『超 国宝 ー祈りのかがやきー』
2025.4.19日(Sat) ー 6.15日(Sun)